夜に旗を振る

※音楽とか文房具の話とか。個人の感想です。

キリンジ "KIRINJI STANDING TOUR 2004" @ 福岡 DRUM LOGOS

開演前

1週間前に取ったチケットは700番後半。開演10分前に会場へ入るとすでにオープニングアクト中。フロアは前後で段差がついていたらしいが、後段真ん中のPA席周りに人が固まって身動きが取れない。実は前段の後方は空いていて、O.A.終了後会場スタッフが両サイドから前へ降りるように誘導し、後方密度はいくらか減少。PA後ろに立って開演を待つ。
ドラムロゴスは、神戸チキンジョージに似た、Zepp仙台を一回り小さくして天井を低くした感じ(キャパ800人)の箱。後段から見たら、前の人の頭でヤスのギターが少しかくれるくらいの高さのステージ(←わかりにくい?)。男女比は他会場とおなじようなもの。

「Music!!!!!!!」 → 「カメレオンガール」 → 「水とテクノクラート」 → 「野良の虹」

定刻からやや遅れてメンバー登場。ヤスは赤のシャツ、兄は襟が白のストライプシャツ。以前のライブの記憶でどうしてもエンディング向きのイメージがあった「Music!!!!!!!」もすっかりこれから始まるライブを期待させるものになってきた。そうだよ、「GoGo GoGo Go!」って歌ってるじゃないかよ、どんどん行ってくれ。
ヤスの声が少し固い。最終日だから緊張してるのか、連日ライブの疲れがでてるのか心配。これで最後だから持ってくれと願う。
イントロからじゃどの曲か分からない「野良の虹」はテンポがさらにスローになって丁寧に聴かせている。サビのスタッカート気味の箇所を歌うときに時々肩が上がるヤスがかわいい(笑)。

MC

MCは全部で3箇所くらいでしたか。いつもと同じところ。
最初のメンバー紹介で、ヤスから紹介された兄が「こんばんは、キリンジ堀込高樹です」と言った後、自分で「ここで自己紹介してどうするんですかね」と自己ツッコミいれてて笑えた。「ラジオをやってると、フルネームで言う癖がついて」だって。「最終日だから自分で自己紹介させるとか(思ったけどやらなかった)」()、「最終日はそんなに経験ないので慣れていなくて。20分の1だからね。」(ヤス)とか言ってた。

ダンボールの宮殿」 → 「休日ダイヤ」 → 「代官山エレジー」 → 「エイリアンズ」

このあたりからヤスの声に艶が出てきてゾクゾクした。微妙にエコーをかけているようで、観客の頭上の空間を包み込むように声が広がる。その脇にしっかり控えるコーラス、支えるバンドの音。ソロパートでもそれぞれが良く引き立つような音を作っていて、とても気持ちよく聴けた。
このツアーの私的最大収穫は、それまであまり好みじゃなかった曲を好きになったこと。元からキリンジには捨て曲無しと思っていてもその中で好みがあるのは致し方なく*1、「エイリアンズ」がどうしてそんなに評価されるのか、正直今ひとつピンと来ていなかった。このツアーで聴いたらヤスヴォーカルの柔い良さが全開だし、間奏のギターなんかもうしびれるね。

「鋼鉄の馬」 → 「茜色したあの空は」

「茜」で盛り上がり、「2in1」の販促MCへ。

「ブルー・ゾンビ」 → 「冠水橋」 → 「十四時過ぎのカゲロウ」 →「嫉妬」 → 「P.D.M.」 → 「クレイジー・サマー」

今回のツアー最大の見せ場。「ゾンビ」→「冠水橋」って地味めなところをしっかり聴かせるところにキリンジのライブ力が上がったことを実感。CDや椅子席で聴いていたときは耳心地の良さにさらっと聴き流していたんだろうが、イメージとしては大きなうずがステージから床を這って忍び寄る感じの、かなり低周波なところに*2うねるグルーヴが感じられる。これはスタンディングライブだからこそ気づいたのかも。キリンジはイスより立って見ろ。
「嫉妬」はもう兄惚れですよ。ここは冷静さ捨ててますんで。ドラムのリズム(強弱の付け方)がちょっと変わったように聴こえたけど気のせいか。
「P.D.M.」の後半、フロント3人のコーラスが重なるところで照明が逆光になり、3人のシルエットだけが浮かび上がる。その存在感。
日替わりで「クレイジー・サマー」が始まった瞬間、ちょっとだけ、ほんとにちょっとだけ”あぁ、もうDは聴けないのか……”と正直思った。最後だから演ってくれると期待してたから。

長いMC -物販

ボールペンは人気商品のため品切れ中。
ヤス:「たいしたもんじゃないんでね」
:「そんなこということないでしょ」
ヤス:「そういうと欲しくなるじゃないねぇ」
:「でも、最近は便利なものもあるしね、通販とか」
ヤス:「便利な世の中になりましたね、おじいさん、みたいな」

長いMC -韓国版FBHL

【10/19 追記】
韓国で発売される「ForBeautifulHumanLife」のボーナストラックに入るクイーンのカバーの話で「ブライアン・メイに印税が入るんですね。 こう(両手のひらをひろげ合わせて印税明細*3を見るふりをしながら)Uh? Kirinji?? Toriyosero! とか」と怪しいガイジンの真似をする兄。
会場から発売日を聞かれて「韓国ライブより前ですよ。今日かもしれない」と投げやりに答える兄。そんな邪険に扱わなくても……

長いMC -九州巡業

九州では美味しいものばかり食べているらしい兄弟。
:「おいしいものばかりで。……(小声で)あ、そうでないところもあったか……いや、それを補って余りあるくらい美味しいものを大分では食べましたからね」
そんな正直に言わんでも(苦笑)。大人の事情で自主規制ってやつですか。

長いMC -鉄分流出

移動で乗ったJR九州の特急がいたくお気に召したヤス。「ソニックイイね」「九州のJRは夢がありますね」「イスがいいんだよね」とべた褒め。
引き継ぐ兄も、ソニックの席のヘッドレストは頭を乗せるとミッキーマウスの耳がくっついたように見えるのにウケたらしく*4、「ディズニーランドで帽子かぶっっちゃった間違った人みたい」とか「こっちの筋の人(左の頬に指で斜めの線を描く)もみんなミッキー」と。
その後兄が「(その筋の人の)着メロがルパンだったのには驚きましたね」と言ったのに全然聞いてないヤス。"その筋"のフリをヤスから見えない左手側でやったことを反省する兄に「別のとこみてた」と追い討ちをかけるヤス。微妙な……

長いMC -兄の曲提供

20箇所で同じことしゃべると飽きてきてるんですかお兄さん(笑)、とか思いつつ。birdに書いた曲を「よくできました」と自賛。「他人に曲書くときはそうでないとだめだよね」とも。藤井隆の曲は、オファーされたときカイリー・ミノーグを渡されてそうで「カイリー・ミノーグかよ。でも最近のカイリー・ミノーグは暗めなんでそういうのなら(自分でも書けるかな)」でできたのが「私の青い空」らしい。
ヤス:「どれも高樹節満載って感じですね」
:「そうでないとね、僕が書く意味がないんで(あっさり)」
あぁ、そのフォローをなしにするような微妙な切り返しはどうよ?

イカロスの末裔」 → 「風を撃て」 → 「ムラサキ☆サンセット」 → 「僕の心のありったけ」

微妙に終わったMCの影響か、ちょっと休んで乳酸が出たのか、「イカロス」は入りでヤスの歌が乱れたり兄がコーラスで先にほうき星に願ったり(とっさに合わせる真城嬢がナイス)、集中力が欠けたようにみえた。でも間違えた後で真城嬢と顔を見合わせて苦笑する兄が見られただけでも儲けもの(馬鹿)。実は「イカロス」前の中盤でも正直「あれ?」という印象をちょっとだけ感じてた。ステージの上のせいじゃなくて、私の気持ちの問題かもしれないと思うけれど、なんとなく、ツアーをこなしてきて得た余裕が、余力を残すほうに現れてしまっているように感じられた。でも、それをチャラにするように後半の兄ギターは気合が入ってるように聴こえた。続く「風を撃て」のエンディングの兄ギターソロも超気持ちいい。大好きだ。そして最後の「ありったけ」、20本分の想いを詰め込んで丁寧にうたうヤス。ここまで来て良かったよ。ほんと。

アンコール :「口実」 → 「グッデイ・グッバイ」 → 「You and Me」

ヤス:黄色ツアーTシャツ、兄:カーキツアーTシャツで登場。ヤスに黄色ってちょっと微妙。
「口実」の兄弟ハモリがすごく丁寧で、3回聴いた中で一番きれいだった。どうしても兄の音がちょっと不安になるところ、最終日だから意識してたのかなぁ。「グッデイ・グッバイ」のソロ歌部もきちんとこなして、今日の兄歌良かったです。AXで初聴きだった「You and Me」の最初に感じたスガっぽさも薄れた。これはまぎれもなくキリンジだよ。

2回目のアンコール:「Drifter」

とりたてて最終日らしいこともなくアンコールが終わり客電が付きはじめ、ドリンクカウンターでビールを受け取っているとキャーーーーーっと歓声が。あわててフロアへのぼり*5、兄弟を視認できる位置を確保。始まったのは本編で演らなかった「Drifter」。もう、涙を下まぶたでせき止めるのが精一杯だった。この曲は音楽とファンへの想いを歌っているんじゃないかと、以前ある人のページで読んだ。その解釈をスーッと体中で受け止められた。そして最後のフレーズ「この僕のそばにいるだろう」をそっと置くよう歌った彼らを観て、思った。彼らは覚悟を決めたんだ、肝を据えたんだと。それがどんな種類のものなのか分からない。私の勝手な思い込みかもしれない。でも、このツアーでキリンジは確実に何かを掴んだだろう。その何かをこの先へつなげていくための「Drifter」だったのだろう。その何かを次にどんな形で私たちにみせてくれるのか、とても楽しみになった。見ることのできたライブ3本とも、とても素晴らしい体験だった。

さっさと袖に引っ込む兄に対して、最後までステージで手を振るヤス。その後楽屋へ引き上げる途中2階から顔出して手を振ってたらしい。ほんと楽しいツアーだったんだろうな。

余談

ますます伸びたヤスの髪。鬼太郎度がさらにアップ、前髪さらさら具合も。んなもんで、うつむき気味にギターを弾く姿が、一瞬、はいどさんとかぶってみえた。あーーっ、だめだ俺。そんなはずないってのに。コンタクトの度数上げようかと思ったよ。

*1:9/27 「どれくらい兄派かというと」(http://d.hatena.ne.jp/nuit/20040927#1096299037)に書いたが、兄の作る変な曲が好き

*2:一時期流行ったアブ●●とかじゃないですよ。

*3:そんなものがあるのか知らないが

*4:こんな感じです →http://www.trainseat.net/interior/ltdexp/sonic/sonic.htm

*5:ロゴスのドリンクカウンターはフロア後方の数段下がったところにある