レベッカ・ブラウン「体の贈り物」
良かったです。
語り手はエイズ患者を担当するホームケア・ワーカー。彼女は関わる人=確実に死へ向かっている人を決して特別には扱わずおだやかな目で見つめていく。後半の話で彼女自身が大切な人を失った経験を持つことが仄めかされるが、あくまで語り手自身は陰にあり、描かれるのは語り手と患者の関係、語り手の目を通した患者と家族の関係だ。ともすれば感情主体で描かれやすい題材を抑えた筆致で語り進めていくのが良い。泣ける話ではないけれど、自分が死に向かうときのこと、大切な人を想うことを考えたくなる話だった。
誰かに腹を立てたままとか、誤解を抱えたままとかで死んでいくのって嫌よね。生き残った人はうしろめたい思いをさせられるし、そうなると死んだ人を想って悲しむのは難しいもの。悲しみって必要なのよ。悼むってことができなくちゃいけないのよ。
悼みの贈り物