夜に旗を振る

※音楽とか文房具の話とか。個人の感想です。

「アヒルと鴨のコインロッカー」@恵比寿ガーデンシネマ

新幹線が仙台へ着くくだりとか、いつも通ってる改札とか、立ち並ぶ2階建てのコーポ群とか、一度も行かなかった八木山動物園とか、そういうのがいちいち思い出されて切なくなる。喪ったものと喪っていくものについての物語。110分あっというまだった。原作のメイントリックをどう処理するかは気にせず観られるし、原作を読んで無くても全然大丈夫。観たら読みたくなるけれども。松田龍平が良かった。そんなに好きではなかったのだけど、この役はなんかいいよなぁ。


↓ネタばれるかもしれないのでたたんで反転しますが、日別表示で見るとキーワードが浮くので注意。







あのネタをどう映像化するのかってことがまず興味あったわけですが、中盤にはネタが割れて、かなりあっさり処理されていた。原作のトリックによる驚きを捨てて、ストーリーのベースを流れる切なさや不条理さや哀しさを描くことをメインにしている。それが上手くできていて、原作を読んでいても読んで無くても楽しめると思う。楽しい、って言葉かあうかは微妙だけども。全然明るくない、かといって重苦しいわけでもない(ペット殺しや琴美の事件や松田龍平の件はあるけれど、ってこれで全編なっちゃうか)、曇りがちな仙台の空みたいだった。伊坂作品って全然明るい話じゃないんだよな。そのあたりは米澤穂信とも通じるような。
瑛太松田龍平が同じ場面を同じように演じるところや、椎名とドルジそれぞれが仙台に下り立つところとか、観ていくにつれて場面と場面がつながっていって、あの時彼は何を思ってこの行動をとっていたのか、その想いに切なくなる。もう1回観たくなる。

映画館を出てふらふらと歩いていると、How many roads... と口ずさんでいた。帰省したら、神様が閉じこめられてるロッカーを使ってみるか。