夜に旗を振る

※音楽とか文房具の話とか。個人の感想です。

私が社長を信用しない理由

ちょうど1年前に雑誌「GQ」の特集で、ビジネスセレブ(社長)がオススメする本を特集していた(表紙はジーコ、巻頭は堀江貴文)。



セレブにもヒルズ族にも興味は無いが(金にはある)ブックガイドの類は大好きなので、もちろんその特集も読んだのだが、一人5冊のオススメ本の中に自著を含めるセレブがいて、ちょっと驚いた。せっかくのパーソナルアピールの場でそれは戦略ミスではなかろうか。その人たちにとって、教養って何なのだろうかと疑問を持った。ましてや、2冊も入れている社長とやらには、福原義春の爪の垢でも煎じて飲んでおけと思った。貴殿はラ・ロシュフーコーを薦めることができようか?*1 ほとんど本を読まないというこの社長は、金儲けの方法は知ってても、経営者には向かないだろうな。だいたい、紙に残る形でそんな発言をしても何のプラス要素もないのではないか。いくら有効な投資方法を編み出しても、この人には人間的に興味が湧かなさそうだと思っていた。そうしたら、家人がいつのまにか、そんなセレブとやらの信者になっていて驚いた今日だった。


小説が書かれ読まれるのは、人生がただ一度しかないことへの抗議からだと思います。

北村薫  


経済は人の業だ。いくら金で換算されるものばかりであっても、人が介入してるかぎり、そこには代替不可能な個々人の人生の影響が現れる。自分が経験し得ないものを想像力を以って経験する術を身に付ける努力を放棄すれば、いつか足元をすくわれることになるだろう。

*1:このときの福原氏のセレクション→ 瀧口修造「夢の漂流記」、高平哲郎「植草さんについて知っていることを話そう」、J・ウィルズ「1688年バロックの世界史像」、近藤耕人・管啓次郎「写真との対話」、森まゆみ彰義隊遺文」、渡辺靖「アフター・アメリカ」、坂野徳隆「バリ、夢の景色」、D・ワッツ「スモールワールド・ネットワーク」、山内昌之鬼平キケロ司馬遷と」、M・パール「ダンテ・クラブ」。「写真との対話」は私も読みたい本。でも高い。