夜に旗を振る

※音楽とか文房具の話とか。個人の感想です。

斎藤美奈子 編 「男女という制度 21世紀文学の創造」


男女という制度


図書館本です。自分で買うには高い。文学とジェンダーに関して作家のエッセイと研究者の論文が半々で編まれている。
編者のキャラの影響があるのか知らんが、特に前半の作家によるエッセイは堅っ苦しくなくて読みやすい。川上弘美少女小説に頻出する恋愛する主体"あたし"の自分語りをし、藤野千夜が言葉遣い(とくに語尾)が規定するセクシュアリティについてふざけ半分な例と文体で書き(とても笑えます)、ネカマ佐々木由香が出会い系に群がる男の実態を暴露する。
後半は小倉千加子の「赤毛のアン」論("日本人女性の晩婚化は結婚に魅力がなくなったからではなく、家庭に取り込まれた自分がオブジェとしての自己=「家」を所有するロマンティックな結婚願望が強まったため"ってのは目から鱗)にはじまり、ハードボイルド・RPGやアニメも含めた少年小説(という言い方って通常はしないですね)・少女小説といったジャンル小説での少年・少女の描かれ方とジャンルという枠組のなかで描かれる内容がどう変化していったのかの論考があり、性(性教育)を「産む性」から「コミュニケーションのため性」として捉えなおし、タブーとされてきた「老人の性」をジェンダーフリー教材に取り上げる提案でしめられる。
この"女性=「産む性」"として社会は扱うことへの論考は現在の社会の状況を考えるきっかけになる。ある日突然子どもが産めるようになったら「産む性」として扱いながら、社会はその「産む」ための事柄を隠したがる。なのにある時になったら急にツガイ生成を奨励し、「だって女性には"母性"があるんでしょ」と母であることを強制し、産めない体になったら「性」が存在しないかのように扱う。出産可能な20代〜40代以外は「性」が存在しないかのように扱ったって、そこに女は存在すれば「性」が存在しうることを考えようとはしないのが、「女性」には欲望が存在しないとして扱ってきた近代の(男性が作り上げた)社会なのだ(ということらしい)。